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2013年2月21日 (木)

詩集 水の感触 岩堀 純子

            詩集 水の感触 岩堀純子 

 編集工房ノア 2013年2月1日発行 定価:本体2000円+税

 

Iwahorihyoushi

販売書店 MARUZEN&JUNKUDO          ライブドア    amazonはまだ

アマゾンで間もなく購入できるようになるでしょうが、まだアップできていないようです。


 友人の岩堀 純子さんの処女詩集「水の感触」が編集工房ノアから出版さました。

 この詩集は昨年の夏頃から秋にかけて、故郷の津和野に引きこもって書き下ろした、とあとがきに書かれていますが、揺れ動く感性の陰翳のなかで、執拗にたどっていった思索のあとが読み取れて痛々しくもあり、くぐり抜けて生きようとする詩人の強靱さも同時に共感をもって読みとれます。詩を書き始めたばかりとは思えない、琢磨されたことば遣いにも、日頃の思索のありようが感じられます。

 ここに二篇をとりあげて紹介してみますが、何かを求めずにはいられない人間の、得られない故の孤独とでもいえるのでしょうか、「二十歳」から「老婆の背中」に至る孤独感は、時を経てきて揺れ定まったのか、あるいは孤はより深まっているのだろ

 後半に三篇の両親と姉の死を看取った経験が書かれていますが、この冷徹な目、感情を抑えた描写には胸打たれるものがあり、肉親の死と引き替えに一人の詩人が誕生したのだと思われました。



二十歳

二十歳のとき
わたしは眠りつづけていた
水の底のように閉じられた
部屋のなかで
夜と昼のとぎれない境い目を
ただ 眠りつづけた
世界は動いていたが
読み捨てられた新聞の記事のように
ぼんやりたわんで視界から遠ざかり
地平の向こうに堕ちていた
わたしはこの世界にひとりだけだった
世界の秩序や慣性は
そ知らぬ顔で通り過ぎていた
ひっそり取り残された部屋の隅で
わたしは孤独に追い求めた
自分の姿を
自分を保つものを
わたしは寂しく自問する
わたしがまだ人であるかどうか
わたしの躰にまだぬくもりがあるかどうか
心臓はうすい胸のなかで
他人のもののように動いていた
皮膚のうらに透けて見える青い血は
架空の熱情の記憶を沈めたまま
すでに壊死しかかっていた
わたしは眠りの膜のむこうで
死んだ者の眼で
自分の生の影が床のうえに
よわよわしく伸びているのを見ていた
人生でいちばん美しい
二十歳のとき
砂のように降りつもる
孤独な敗北感と無力感に
埋もれて
わたしは眠っていた



老婆の背中 ビンの蓋が開かないからといって わたしは人を呼ばない 荷物が重いからといって わたしは人を呼ばない 足を捻挫して立てないからといって わたしは人を呼ばない ひとりの老婆を思うからだ 老婆は冷えた暗い台所で 食器を洗い 野菜を茹でる かたい粘土の畑に 花や野菜を植え ただ 黙し ひとりで暮らしている 呼んでも 来る人はない わたしは助けを求め 声をあげたくなると 孤高の老婆の丸い背中を思う 夜更けに群れ騒ぐ闇に怯えるときも ひとりの老婆がそこにいる 胸に斧を握りしめて
 

青春を輝かしいものとして語るひとは多いが、青春というものは悲惨の一語に尽きるという人生もまたある。ものを思う側の人間に生まれた人の宿命であるかも知れないが、詩を書くというカルマを背負ったこの詩人は、朗々たる青空のもとに必ずしも生きてこなかったことはたしかだ。懊悩や逡巡があって、求めるものが見えてきたのか。この詩人はその後もブログに精力的に詩を発表されている。一読の価値ある詩集をお勧めする。

ブログ・熱帯の朝と歌と

 あとがきをアップしておく。

Photo


詩集の評 瀬崎祐の本棚 詩人瀬崎祐さんのブログに取り上げられています。


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文化・芸術」カテゴリの記事

コメント

岩堀さんから詩集「水の感触」を贈って頂き、読み進むうち感動で胸一杯になりました。
どのように岩堀さんに伝えたらよいのか、言葉が出て来ませんでした。
宥厳さんの言葉は、私の感情をそのまま伝えてくれるものでした。
有難うございました。ブログに次々発表される詩を期待しながら読んでおります。
岩堀さんを紹介してくだされたことと共に、感謝しきりです。

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